名入れストラップの製作手順です。図案やマスキングシートの製作、マスキングの仕方やサンドブラスト工程などを説明しています。
名前やイニシャルを彫刻できるクリスタルガラス製の飾りが付いたストラップです。ストラップに付いている直方体のガラス部の裏側に、左右反転した文字を裏彫りします。
ガラス部の裏側に文字を彫刻することにより、ガラス部を表側から見た時、奥行き感のある立体的な仕上がりになります。
ガラス部の大きさに合わせて彫刻用図案を作ります。
文字が小さすぎると、彫刻したときにつぶれて判読できなくなるので、大きさに注意します。特に漢字をレイアウトする場合は、アルファベットや数字に比べ、漢字はつくりが複雑なので、文字の大きさに加えて、文字の太さにも注意します。
透明なフィルムに、2.で作った図案を黒のインクで印刷します。このフィルムを基にして、サンドブラスト用のマスキングシートを作ります。印刷した文字が左右反転しているのは、裏彫り用のマスキングシートを作るためです。
透明なフィルムに印刷する理由は、このフィルムに紫外線を当てて紫外線硬化型の樹脂シートに図案を転写する際、紫外線の当たる部分と当たらない部分を作り出すためです。また、黒のインクで印刷する理由は、黒色は紫外線を吸収して通しにくいためです。
紫外線を当てることによって硬化する樹脂シートです。このシートに彫刻用図案を転写して、サンドブラスト用のマスキングシートを作ります。
気温によって樹脂シートの反応性が変わるため、紫外線を当てる時間で反応の度合いを調節します(気温が低いときは樹脂シートの反応性が落ちるので、紫外線を当てる時間を長くします)。しっかりと反応して硬化していないと、次の工程でシート全体が溶けてしまうので注意が必要です。
図案を印刷したフィルムと、4.の樹脂シートを重ねて紫外線を当てます。
透明フィルムに印刷された図案の黒い部分で、紫外線をカットすることにより、樹脂シートに硬化している部分としていない部分を作ります。
紫外線を当てた後、弱アルカリ性の溶液で硬化していない部分を溶かして洗い流すと、写真のように文字の形が抜けたマスキングシートが出来上がります。
5で作製したマスキングシートを貼り付けるガラス部に、水溶性の接着剤をハケで塗ります。接着剤の厚さにムラがあると、サンドブラスト加工したとき、彫刻される深さが部位によって変わり仕上がりに影響するので、厚さが均一になるように注意して塗ります。
接着剤を塗った後、30分ほど放置して乾燥させます。
ガラス部に塗った接薬剤が乾燥した後に、5.で作ったマスキングシートを貼り付けます。マスキングシートは薄くデリケートなので、一度貼り付けると破らずに剥がすことが難しいため、慎重に位置合わせをして貼り付けます。また、接着面に気泡ができないように注意します。
この後のサンドブラスト加工で、貼り付けたマスキングシートがはがれないように、さらに指で圧着してストラップに密着させます。
サンドブラスト加工で、砂が狙いとは違う部分に当たらないように、マスキングシートで覆われていないガラスが露出している部分を、ガムテープでマスキングします。サンドブラスト中に、エアーの圧力でガムテープが剥がれてこないように、しっかりと指で圧着します。隙間があると、そこから砂がストラップに当たってしまい、仕上がりに影響するので注意深くマスキングします。
サンドブラストの研磨材として用いる金剛砂です。粒度によって種類分けされていて、細かいものを彫刻する場合や深く彫刻する場合など、状況によって使い分けます。
使用しているうちに、砂のひとつひとつの粒が小さく軽くなり、ガラスを削りにくくなってきます。そうなると作業効率が悪くなるので、そのような場合は補充をします。
サンドブラスト加工で使う縦1.5m×横1mぐらいの箱状のキャビネットです。前面の扉には、作業中に内部を見るためのガラス窓と、扉を閉めたまま内部に手を入れて作業するための手袋が付いている小穴が開いています。
このキャビネットの中でサンドブラスト加工を行います。キャビネット内の下の部分には金剛砂がたまっていて、それを外部に設置したコンプレッサーからのエアーの圧力で吸い上げ、ブラストガンから吐出してサンドブラスト加工を行います。加工中は砂や削られたガラス粉がキャビネット内を舞うため、それらを吸い取るための集じん機がホースでつながっています。
キャビネット内部で使うサンドブラストガンです。本体は金属製で、先端のノズルの横にキャビネット内の金剛砂を吸い上げるホース、グリップにコンプレッサーからのエアーを供給するホースがつながっています。エアーを吐出すると圧力で金剛砂が吸い上げられ、先端ノズルから砂の混ざったエアーを吐出して彫刻します。エアーのオンオフは、足元にあるフットスイッチで電磁弁を開閉して行います。
ノズルはセラミック製で、使用しているうちに砂との摩擦により穴の径が大きくなり、吐出する砂が広がってガラスを削りにくくなるので、そのような状態になったら新しいノズルに取り換えます。
ストラップをキャビネットの中に入れ、前面の扉を閉めます。密閉されたキャビネット内で、マスキングシートの文字の形に抜けている部分(ガラスが露出している部分)に、サンドブラストガンで金剛砂をぶつけて彫刻を施します。
吐出するエアの圧力、金剛砂の粒度や当てている時間によって彫刻する深さを調節します。彫刻された深さが部分的に異なると美しくないので、ノズルから吐出される砂でゆっくりと小さな円を描くようにして、彫刻部全体に砂が均一に当たるようにします。その際、彫刻部に砂が90度の角度で当たるようにします。
サンドブラスト加工が完了したストラップのガラス部です。0.5mmほど彫り込んであります。彫刻した部分はスリガラス状に白くなり、しっかりと図案が彫刻されました。
彫刻部をより際立たせるために着色加工する場合は、このまま塗料を流し込み、乾燥させます。
マスキングシートとガムテープを剥がして水洗いすれば、名前入りストラップの完成です。ガラス表面についている細かな砂で傷がつく場合があるため、水洗はやわらかいスポンジでやさしくなでる様に行います。
ガラス部の裏側から文字を反転して彫刻してあるので、ガラス部を表側から見たとき文字が浮いているような立体的な仕上がりです。